2013年12月27日金曜日

年内最後のデータとり


年内で最後の計測を終えました。
脳卒中の非麻痺側使用制限下での歩行の効果です。

発症から数年経過した対象者のデータを測定しておりますが、早速解析すると面白いデータになっております。
膝関節を固定して歩行させるという金のかかっていない貧乏療法(Poor Tharapy: 勝手に英訳しました。理学療法と同じPTと略せますが(笑 )でも効果が出せるものです。

世の中ではrTMS、tDCS、ロボット療法、ボツリヌス療法など脳卒中に関してどんどん新しいリハビリテーションが開発されておりますが、結局それだけでは治療は完結出来ず、専門職による運動療法が大事だといわれております。
iPS細胞で中枢神経を作り出したとしても、その細胞を体内で生かし、ネットワークを作るのは運動療法であるそうです。

それも運動学習理論などを踏まえた上での提供が不可欠です。

やはり私たち理学療法士、作業療法士の腕にかかっていると思っています。
私たち自身の腕は磨いていかなければなりません。

磁気刺激などは大学などの先進医療研究機関の医師、療法士が研究を行ってくれるでしょうから私はどこでも誰でも行い得る治療法を開発したいと思っております。

まあ、私も大学教員ですが...

まだまだ症例は集まっていませんが、どこかと協力して行っていきたい方法です。
誰か一緒にやってくれる方を募集しております。


2013年12月9日月曜日

コエンザイムQ10


サプリメントについてはあまり知識がないのですが、毎日来る論文のトピックスニュースメールを見ているとたまたま目に留まった。

Effect of coenzyme Q10 supplementation on heart failure: a meta-analysis

http://ajcn.nutrition.org/content/early/2012/12/04/ajcn.112.040741.abstract

メタアナリシスで心不全に対するコエンザイムQ10の投与効果を検証したものだそうです。
このメタアナリシスによると、更なる大規模調査研究が必要であるが、コエンザイムQ10の投与によって駆出率の改善が見られたそうです。

個人的に抗酸化作用とか、肌が綺麗になるということくらいしか知らなかったので、調べてみたら、1973年に既に日本でうっ血性心不全治療の医療用医薬品として世界で初めて認可されていたとのことです。しかし、米国心臓学会/米国心臓協会ではまだ有効性は認めていないそうです。

恥ずかしながら全く知りませんでした。

それに対して、俗に謳われている肥満解消や美容に関する無作為化比較試験はないとのことです。

何か意外というか、コエンザイムQ10ってうさんくさいものとしか思っていませんでしたが、こんな作用もあるんですね。

今回は嚥下でも脳でもなく、栄養に関することでした。

2013年11月22日金曜日

キメラの翼


ちょっと前に、病院の作業療法士が朝になぜだかドラクエのキメラの翼の話をしていました。

使うと城に帰れる、ルーラと同じ効果を持つ代物です。ダンジョンの中で使うと頭をぶつけるというギャグを体験出来ます(今の学生は分からないと思いますが…)。

その日にたまたま言語聴覚士の方に半盲と半側空間無視の鑑別の質問を受けました。
半盲は自覚があれば過度な頚部の回旋とか眼球運動が見られるのですが、自覚がない急性期だと半側空間無視と区別がつきにくいこともあります。

決定的な違いは「入れ子現象」かと思います。

半側空間無視であれば完全に非無視空間に目標を提示しても、注視したものの相対的無視側を見落とすので、思いっきり右側(左無視であれば)で図形を読ませてみたらとアドバイスしました。

そこで、思い出したのが「キメラ図」です。

朝のキメラの翼の話もあって、「キメラ図」を試しに使って、右空間に提示して何と答えるか見てみればと思いました。

そこで「キメラ図」をインターネットで探したのですが、全く画像が見つかりません。
「chimeric object」でやっと海外のものが出てきました。

http://openi.nlm.nih.gov/detailedresult.php?img=3034025_gr1&req=4

左右で半分ずつ別の絵が混ざっているものです。

例えば目と魚のキメラ図を見て、何の違和感もなく魚と答えれば半側空間無視で、それを右空間に完全に入れて行えば鑑別に有効ではないかと思いました。

日本ではあまりやっている人がいないのですかね。
何かの本に載っている気がしましたが。

一度機会があれば試してみてください。







2013年10月31日木曜日

Dysphagiaに論文が掲載されます。


Dysphagiaにアクセプトされた論文がオンラインでアップされました。
課金しないと読めませんが…

オープンアクセスにするためには2000ドルだか3000ドル必要だそうです。
そんなお金はないので、通常の形にしました。

雑誌に掲載されるのは来年になりそうです。

"Effect of Carbonated Beverages on Pharyngeal Swallowing in Young Individuals and Elderly Inpatients"

http://link.springer.com/article/10.1007/s00455-013-9493-6

炭酸飲料は高齢者において嚥下運動の時間を短縮する効果があり、水やスポーツドリンク、無糖の炭酸水よりも主観的に飲み込みやすいと感じられたという内容です。

今回は嚥下に問題のない高齢者を対象としましたが、嚥下障害患者に対しても誤嚥をある程度予防出来る飲料であること、炭酸の口腔、咽頭への刺激による嚥下改善の持続効果に関してもこれから明らかにしていきたいと考えています。

余談ですが、なぜ嚥下の研究をしているかというと、関わっている臨床施設に今までSTがおらず、PT、OTが嚥下練習を行っていた経緯があるからです。今ではSTが入ってくれましたが、やはりSTがいない施設ではPTだから嚥下は診れませんとは言ってられません。

そんな中で試行錯誤して、散々文献を調べて勉強して書いた論文です。

あまりに気合いを入れすぎて長い論文になってしまいましたので、英語を読むのに疲れてくるかもしれません。
あと、雑誌になるまで待てない、でもお金なんて払いたくないなんて方もいると思います(いるのか?)。

そんな時はお気軽に私にメールをください。かいつまんで内容を説明いたします。

mail: ptmotoyoshi@gmail.com

2013年10月4日金曜日

世界神経学会


先週にウィーンで行われた世界神経学会(WCN2013)に参加してきました。


WCNでは神経学会という位置づけからか、最近の流行からか私のように誘発筋電図を用いた研究はほとんどなく、TMS,EEG,fMRI,NIRSなどの研究が主流でした。
あと、全体的なテーマがNeuro-modulationであり、いかにして脳を刺激していくかということが最近のトピックスであるように感じました。そんな中でもある程度ベーシックな神経疾患の症状に対する治療法などもあり、面白い内容でした。

私の発表は誘発筋電図を用いて大脳からの下降性抑制の変化を捉えるものでしたが、他に同様の手法を用いている発表がないこともあり、時代遅れかもしれませんが、古くて逆に興味深いような感じで色々な方がポスターを見てくれていました。

質問もいくつかいただいたのですが、やはりNeuro-modulationに関連して、「直接脳を刺激しなくてもNeuro-modulationは起こるものなのか」や「どのくらいの持続時間があるのか」「脳性麻痺の片麻痺や脊髄損傷にもいえることなのか」ということを質問されました。

私の英語力のなさからあまりちゃんと答えられた気はしませんが、何とか納得はしてもらえたようでした。写真のウズベキスタンの研究者はなぜか私のポスター単独、ポスターと私、ポスターと私とその研究者と三枚の写真をお願いされました。何かが気に入ったのでしょうか...



もちろん、ウィーン市内の観光もしてきました。
治安もよく、交通も分かりやすいので良い町です。現地の方が言うには世界で幸福度が高いのはデンマークだけども、住みやすい町でウィーンは一位を何度もとったそうです。

今までにノーベル賞を9人輩出しているウィーン大学にも行ってきました。ウィーン大学のかばんなども記念に買いましたが、そのせいで帰りの飛行機まで何度も大学生に間違えられました。ノーベル賞を多数輩出するくらいで学費も無料な大学ですから、そんな優秀な大学生に間違えられたのは名誉かもしれませんが、もう36にもなりますから複雑ですね。
ウィーン大学にあった記念のモニュメントで、次にウィーン大学でノーベル賞をとるのは誰かという意味で「?」で空けてあります。

まあ、素晴らしい町でした、また行きたいですね。
















2013年9月18日水曜日

FD研修会


大学では教員の教育力向上のためのFD(Faculty Development)研修会というものがあります。

今日はその研修会で、大学の全教員の前で発表をしてきました。内容は「臨床実習前の科目を超えたOSCEの取り組み」です。OSCEというのは日本語で客観的臨床能力試験のことで、単なる実技試験でなく、問題解決能力や患者に対する態度も評価しようとするものです。そのOSCEを私の科目でも導入しているので、発表してほしいと言われ、緊張しながらもやってきました。唯一の成果は発表中に一度笑いを取れたことです。

どうしても笑いを入れないと気が済まないのは、関西人の血がハーフでも流れているからなのでしょう。それにも関わらず、授業中にはすべってばかりなのは私の教育力が足らないのでしょうか。

まあ、笑いを取れる人というのは素質もありますから、私には素質がないのでしょう。

OSCEの概要は以下を参照ください。

http://www.cato.umin.jp/02/0601osce_outline.html

発表者はその後の情報交換会というシンポジウム形式の議論にも参加することになっていて、とても勉強になりました。単なる聴衆としての参加者ではなく、発表者でなければ得られない経験でした。

私は専門学校勤務の時から8年半教員をやっていますが、教育というのは各先生ごとに考え方も異なり、正解は出ないものだとも感じました。

最後に言われていましたが、教育というのは相手があってのことです。やはり学生に合わせた教育というのが必要になるのでしょう。

私の授業に関する思いですが、学生にはつまらないならつまらないと表出し、改善を求める権利があると思っています。私も学生に完全に迎合した授業をするつもりはないですが、どうして欲しいのか、何が分からないのかを学生は表出し、教員に意見してこそ授業は良いものになると信じています。授業をよりよいものにしていくのは学生自身だと思います。学生にはその意識を持ってほしいと思っています。教員も学生の意見に耳を傾け、常に改善する姿勢がないといけません。

教員は学生の自主性がとか最近の学生はという前に、学生の文句を聞いてみてはどうでしょう。

ところで、最近の若者は...とよく言いますが、古くはエジプトのパピルスにもそのような記述があるそうです。人は時代とともに変化していきますが、若者と上の人の意見が合わないのは昔からのようです。変化をすることが問題なのか、変化を受け入れられないのが問題なのか、どっちでしょうか?


2013年9月16日月曜日

結局脳は使われたほうがいいのか。


前回の投稿の続きです。

有名な話でピアニストやハープ奏者は手指の運動を司る脳の領域が拡大していることがいわれています。

そう考えると前回の投稿のように使われないほうが効率が良いという考えは間違っているのではないかということになります。

確かに高度な能力を獲得するためには脳の活動量が増えることが必要で、使用依存的に脳の領域も拡大するでしょう。そうするとやっぱり脳の活動をあげることが大事ということだと思ってしまいます。

ちょっと待ってください。それは難しい課題が先行して、脳が課題指向的に適応しているということです。

他言語を習得するのに脳の活動をあげることは十分意味があることだと思います。それは実用的な課題の習得という目的が明確にあるからです。

単純計算や頭の体操のようなことをして、脳の活動が上がったと喜んでいても、実際の生活の何に般化(応用)出来るというのでしょう。要は習得したい課題自体を行うために脳の活動量を上げることは意味があるけど、現実から離れた課題を行って脳の活動量だけに着目していても何の意味もないということが言いたいのです。

しかも課題依存的に一時的に上がった活動量も、その課題が容易く行われるようになれば下がるはずです。同じ曲の演奏でプロのピアニストと学生を比較すると学生のほうが活動量は高くなっているはずです。やはり、活動量だけの問題ではないと思います。

こんなこと書いていると、いつかどっかの脳トレを勧める会社から圧力がかかりそうですが...

2013年9月14日土曜日

脳はやっぱり一部しか使われていない?


今日、Twitterで他の方がつぶやいてくれていたのですが、最近の研究で脳はやはり一部しか使われていないようなのです。ちなみに@yuji_ikegayaさんという方が教えてくれました。

昔は脳は10%くらいしか実は日常で使っていないという話がありましたが、連合野の活動の証明によって、それは間違いであり、脳に使われていないところはないことが証明されてきました。

しかし、今週の『Cell Reports』誌によると全ての神経活動は実はそのうちの10%ほどの神経細胞でしか起こっておらず、他の神経細胞は休んでいるというのです。

http://www.cell.com/cell-reports/abstract/S2211-1247(13)00401-4


私もTwitterで得た情報をもとに書いており、Summary以外の本文をまだ読めていないので、背景は分かりませんが、それが本当だとしたら興味深いです。

ここから個人的な考えです。

この事実をもって、残りの90%を活動させると頭が良くなると言えるでしょうか?

そうではないでしょう。脳がフルに活動してしまえば相当疲れます。脳が適度にさぼってくれていることによって我々の活動が成り立っていると思います。

以前に脳トレブームで、ある計算課題をすると前頭葉が活動するから脳にいいということが流行ったことがあります。脳が活動すればいいのでしょうか? また、あることをすれば神経のシナプス結合が盛んになるという報告もあります。

確かに脳が機能不全を起こしている障害モデルでは活動させることは治療につながります。しかし、健常モデルでは活動をあげることが大事なのではなく、活動しなくても課題が出来るようになることが重要でしょう。脳のシナプス結合も結合ばかりしていると過放電を起こしてしまいます。適度な刈り込みがあるのが正常といわれています。

たとえば、1kgの荷物を持ち上げる時に筋肉がたくさん活動しましたという場合と、あまり活動しなかったけど持ち上げられましたという場合では、活動しないほうが効率がよく身体が疲れないに決まっています。脳でも同じで、あまり活動しないでいろんなことが出来るようになったほうが疲れなくてよいのです。

そんなわけで、健常モデルでは無理に使われていない神経細胞を動員しようとしないで、むしろ使わない細胞が増えていろいろなことが出来るようになれば効率がいいといえるのではないかと思うわけです。

主観ですけどね。

2013年9月13日金曜日

国際学会準備


ブログというのはくだらないことでも続けなければ意味がない。
そう言われて反省しています。

どんだけやっていないんだ... 海外に出した論文がアクセプトされたら再開などと変な意地をはっていたのがいけないのか...

頑張ってくだらない愚痴であってもはき続けて更新します。はい...

来週末からオーストリアのウィーンで行われるWorld Congress of Neulogy(世界神経学会)に参加してポスター発表してきます。

タイトルは"Changes in presynaptic inhibition during movement restriction of unilateral lower limb in a hemiparetic patient and healthy individuals."で、誘発筋電図を用いた神経生理学的な研究です。

まだオンラインでは読めるようになっていませんが、脳卒中の非麻痺側の膝関節を伸展固定して歩行させると麻痺側の荷重量(使用量)が増えて、歩容が良くなるという論文を最近書きました。理学療法科学の最新号です。興味があれば読んでみてください。ほぼ症例検討に近い即時効果の研究ですが...

背景としては運動学習の効果がまず考えられるのですが、荷重量が増えるということで、使用依存的な脳の可塑的変化も期待出来ないかと考え、脊髄のレベルで脳からの下行性抑制の変化を今回の発表では見ています。

養成校で、「脳卒中になると脳から脊髄への抑制が効かなくなり、腱反射亢進や筋緊張異常などの陽性徴候が現れる」と習いますよね。その抑制が非麻痺側の膝関節を固定して麻痺側の使用量を増やすとどう変化するかを健常者と比較しました。

そうすると、健常者でも抑制は増えるのですが、脳卒中でほとんど抑制の利いていない患者が一気に抑制量が増えるんですね(通常歩行ではほとんど変わらないのに)。抑制が増えるということは筋緊張や随意運動のコントロールが出来るようになるのではないかと思っています(これはかなりの拡大解釈ですが)。

そんなわけで、今日ポスターの英文校正が返ってきたので、プリントアウトをしました。
来週がんばって発表してきます。