2014年1月26日日曜日

中枢神経の短時間における可塑性


この週末はうちの通信制大学院の冬期スクーリングでした。
今年から自分が大学院生を担当し始めて、勉強になることが多いです。

今日はスクーリングの最終日で科目終了試験でした。
私の担当科目は口頭試問での議論によって試験を行っているのですが、その中での議論がとても面白かったです。

内容は随意的な運動をどのように無意識の運動につなげていくかということでした。
私が学生の頃は意識的な運動を無意識化するには何十回、何百回も反復して身体に染み込ませることが重要だと教わっていたように思います。

しかし、1990年代の後半頃からShort term/ Rapid plasticityという言葉が海外で出始め、ごく短時間の運動においても中枢神経における可塑的な変化が生じるというものです。

このことによって運動を効率化したり、無意識に出来るようになったりするそうです。

たとえば、健常者に対して経頭蓋磁気刺激(TMS)を行って母指の運動を誘発した後に刺激の運動方向とは逆の運動を随意的に30分行わせると、今度は刺激によって誘発される運動方向が随意運動の方向に入れ替わると報告されています。これは大脳皮質のレベルにおいて同じ部分を刺激しても、随意的運動を繰り返すことによって短時間に活動様式が逆になることを示しています。つまりは全く同じ部分なのに運動の方向が逆になってしまうのです。

"Rapid Plasticity of Human Cortical Movement Representation Induced by Practice"

脊髄レベルにおいてもそのような変化は起こるようです。

"Plastic changes in the human H-reflex pathway at rest following skillful cycling training"

臨床を振り返ってみれば、その場で対象者の運動が変化していくのは中枢の短期間の可塑性が関与しているのでしょう。

私たちはそれを支援出来るように、適切な課題設定や動機付けが必要になってくると思います。

あと、大学院生が言っていたのですが、運動器疾患の対象者であってもバイオメカニクスだけで解決は絶対に出来ず、中枢の可塑性や筋、関節への神経調節の知識が不可欠であるということです。

全くその通りだと思います。筋肉や関節の動きだけで解釈して治療していく時代はとっくに終わっているのだと思います。

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