しかし、上位中枢からの抑制が効かなくなって、脊髄レベルの興奮性が上がる事によって筋緊張、伸張反射も亢進するなどと言われていますが、脊髄レベルで何の抑制が効かなくなっているのか?
それはシナプス前抑制、シナプス後抑制、交叉性抑制、Post-activation depressionなどが脳卒中においては抑制系システムとして効かなくなっているとは言われていますが、回復とともに脊髄レベルで何が起こっているのかはまだはっきりとは分かっていないようです。
Impaired efficacy of spinal presynaptic mechanisms in spastic stroke patients
http://brain.oxfordjournals.org/content/132/3/734.long
こちらの研究ではシナプス前抑制とPost-activation depressionに関して、筋緊張、麻痺側と非麻痺側、急性期と慢性期の違いなどの検討がされています。
シナプス前抑制は非麻痺側において、急性期に抑制が効かなかったものが慢性期になると健常者と同じ水準まで回復します。おそらく非損傷半球の影響や脳の可塑性によるもののようです。
Post-activation depressionは筋緊張の程度と関連していて、Ashworth scaleが低いほど抑制が効いています。
難しい話になりましたが、脊髄レベルで抑制を考えるというのは上位中枢からのコントロールを反映している訳で、もし麻痺の回復との関連が明らかになれば、抑制を高めるような治療法が有効であるという根拠になると考えています。
私自身は脳が好きですし、脳科学の知見は多いにリハビリテーションに役に立つと思っています。しかし、脳ではなくそこからの遠心性入力を受けている脊髄に着目するというのも面白いのではないかと思い、治療法の開発との関連も含めて今週末の体力医学会地方会で発表してみます。まだまだ粗い基礎データですが、新たな視点になればと思っています。
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