2012年4月1日日曜日

斜めに寝るのは認知障害のサイン?

私は一応研究活動を行っていますが、まだまだ他の先生方に比べて未熟なところが多くあります。しかし、臨床のスタッフに研究に積極的にトライしてもらいたい気持ちは強く、学生、臨床スタッフに研究の話をする時によく取り上げる論文があります。

Lying obliquely—a clinical sign of cognitive impairment: cross sectional observational study
 BMJ 2009;339:b5273

ベッド上で座位からまっすぐ寝てくださいと指示して臥位をとらせた時に、ベッドの軸とどの程度の変位があるかを対象者の上から撮った写真で分析しています。その角度とMini-Mental State Examination(MMSE)、Dem Tect、時計描画テストとの関連を見ています。また、23名の神経専門の医師に0°から15°までの斜めになった臥位を見せて、何度からが主観的に斜めに寝ていると感じるかも聞いています。

結果として、年齢を考慮した相関係数はMini-Mental State Examination, r=–0.407、DemTect, r=–0.444; 時計描画テスト, r=–0.467となっています。 また、医師が主観的に斜めだと判断するのは7°からとなっています。7°を基準として他の認知機能テストとの関連でみると、特異度89% ~ 96% 、 感度 27% ~50%となっています。

靴をはいたまま臥位になったせいで斜めに寝ている対象者に関しては除外しています。この結果から、面倒くさいわけではなく、自分でまっすぐと感じているにも関わらず斜めに寝ている対象者に関しては身体軸のずれが示唆され、認知障害のサインになるのではないかということです。

この結果も興味深いのですが、私が研究方法でこの論文を紹介するのは内容が日々感じている臨床の疑問と直結しているからです。斜めに寝ている対象者を見れば認知機能は大丈夫なのかなという印象を何となくは誰しも抱いています。その印象、疑問を検証していく手段が研究だと思っています。研究に取り組んだことのないスタッフは、研究は特別なものであると思いがちです。しかし、日々の臨床の疑問に関しても正しくデザインを組み、検証していけば立派な研究になっていきます。この研究に関しても臥位をとらせる時の指示や天井にまっすぐの手かがりとなるものがあったのかという疑問は私にもありますが、世界的に権威あるBMJに掲載されている立派な論文です。

研究は甘く見てはいけないし、私もまだまだ勉強しなければいけないことは多いですが、自分の思考を検証するため、そして何より対象者のために研究に取り組んでいただきたいと思います。

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