2015年4月30日木曜日

WCPT


明日より5月4日までの日程で、シンガポールでWCPT(World Confederation for Physical Therapy Congress)が行われる。

私は連休中に家をあけられないのと、中心に研究していることが理学療法らしくないので、再来月にドイツで行われるISPRM(World Congress of the International Society of Physical and Rehabilitation Medicine)に参加することにしている。

WCPTでは、私の研究室の通学生大学院生と通信制大学院の修了生が発表する予定である。

"Relationships between changes in the skeletal muscle mass index and number of days needed for independent gait after cardiac surgery"

"The effect of perceived LLD on lower limb load characteristics during early postoperative static standing in patients who underwent THA"

の二題である。

これからも国際的に活躍してくれることを期待しています。


2015年4月8日水曜日

学部の初回講義


今日から私の講義が開始する。

担当している講義は運動系理学療法と地域理学療法、研究分野は脳血管障害、嚥下障害、講演では内部障害のリスク管理の話をしたりと、何でもやっている。

まあ、理学療法士なので何でも出来て当たり前なのかもしれない。

私は学生に授業中に寝るなとは言わない。寝ているとすれば自分の講義に問題があると思うし、いくら工夫しても寝ているとすれば学生の自己責任である。高等教育とはそんなものではないかと思う。

寝ているというのは、私の講義がつまらないという学生からのメッセージだと受け止めているし、改善しないといけないと思わなければいけない。

そもそも起きていたとしても、視覚、聴覚からの入力を脳の側坐核でつまらない、嫌いという感情を入れてしまえば自己報酬系が働かないので、海馬での記憶の定着は起こらない。


まあ、みんな寝ていたとすれば気分がいいものではないので、私の自己報酬系も働かず、やる気が出ないのであるが。

2015年4月7日火曜日

研究進行状況


新年度になりまして、新しい学部生、大学院生も入ってきました。
私は学部1年生のチューターと、研究室に通信制大学院生を新たに1名迎えました。
今年度の大学院生はDual Taskの研究を希望していて、2年生になった大学院生も同時遂行課題と注意の焦点の研究をしていますので、大学院生同士刺激しあって成長してほしいですね。

さて、私の研究ですが…

・嚥下障害(科研費): 信頼出来る音響解析ソフトをパソコンに入れましたので、嚥下音の解析を実施中。FFTでの周波数解析だけでなく、インパルス応答、ACF測定なども出来るので、現在は周波数分布を中心にしていますが、異常嚥下音の詳細な解析も行っていく予定です。
ちなみに、聴診器にマイクを仕込んで、パソコンに音を取り込むという方法をとっていますが、解析にかけなくてもパソコンのボリュームを調整すれば、かなり明瞭に聞こえます。嚥下音を聞くことに慣れていない方は、パソコンに取り込んでから改めて音を聞いてみるという方法も良いのではないかと思います。



・嚥下障害予防: 歯科衛生士さんと一緒に複数の市と連携して、地域高齢者に対する嚥下障害予防に関する研究を今年度より実施。

・脳血管障害: 下肢の麻痺側集中使用に関して、長期的に介入を計画中

・教育研究: 昨年度、学科にiPadをまとまった数購入してもらえましたので、iPadを使用した授業改善に関して、今年度より実証研究を開始


・依頼原稿: 締め切りが近くなってきたので、そろそろ本腰を入れないと…

まあ、原稿やら学会抄録やら締め切りがあるものも多く、何としても今年度に完了しないといけない研究もあるので、がんばっていきます。

2014年11月23日日曜日

「岡山県理学療法士会の講演」の前の話


昨日、岡山県理学療法士会で講演してきました。

私は一応、神経系の専門理学療法士を持っているのですが、最近特に嚥下の研究を中心に行っていたり、内部障害の講演依頼をもらったりしているので、器用貧乏になるのではないかと困惑している部分があり、講演の前日に大学時代の恩師に電話で相談させてもらいました。

私の大学時代の恩師は循環呼吸系を研究している先生で、講演の内容も内部障害に関することだったので、相談させてもらったわけですが、やはり恩師は偉大だと思いました。

「理学療法士としては、まずジェネラリストを目指しなさい。何でも出来るようになった上で、初めてその中で得意なことが出てくる。ひたすらに何でも勉強する姿を学生に見せなさい。」といわれました。

迷いが吹き飛びました。

私は昔「何でも出来るのは、何も秀でて出来ないのと同じだ。それぞれの専門性を持つ個人が集まれば、レベルの高い集団が出来る。」と言ってきましたが、恩師からは「それは横のつながりが十分に強い組織に限られる。」ということを言われました。

確かに目の前の対象者に向かって、自分は神経系が専門だから内部障害は得意じゃないとは言ってられないです。

そんな訳で、自分が内部障害のリスク管理の講演をすることに何の迷いもなくなりました。

実際の講演は、参加者から難しかったという感想が多く、上手くいったとは言い難いのですが、いずれこの内容はどこかで文章としてまとめる予定なので、今回の参加者がそれを見た時に少しでも理解の助けになれば幸いです。

2014年6月29日日曜日

ハンガー反射


私が大学院修士課程に入った頃でしょうか。

針金性のハンガーを頭にかぶると自然と頚部が回旋するということをどこからか聞いて、試してみたことがあります。

確かにやってみると頚部が勝手に回旋していくような気がします。

あれから10年経ち、今日参加した半側空間無視の講演でハンガーを利用して頚部を回旋させて半側空間無視を治療するという海外の論文があるということを聞きました(パワーポイントでは示されませんでしたので、どの論文か分かりませんが)。

帰ってから調べてみたのですが、やはり半側空間無視に対するハンガーを用いた治療の論文は見つけられませんでした。

しかし、日本では「ハンガー反射」という名前で呼ばれているそうで、研究している方もいるみたいです。

http://www.interaction-ipsj.org/archives/paper2009/interactive/0180/0180.pdf

どうやら側頭部の前方に圧に反応するポイントがあるようです。

しかも、頚部のジストニアに対する治療として研究している方もいました。

10年前には気のせいではないかということを回りに散々言われましたが、誰に何と言われようと研究してみれば良かったです。

何でも疑問に思ったことは研究してみることは大事です。
研究とは高尚なもので、誰もが納得する内容でないとテーマにしてはいけないと思っている人が臨床には多くいます。

しかし、「本当に独創性のある研究は最初は誰にも理解してもらえない」と、身近で有名な研究者から言われたことがあります。

何でも調べてみる姿勢は大事だし、もっと研究というものが身近になれば良いと思います。

「研究をなめるな!」と言って、研究に手を出させないようにしている人が、実は科学の進歩を妨げている気がしてなりません。

2014年6月25日水曜日

鍼治療の効果


少し前にスポーツメディスンという雑誌に「理学療法と鍼治療の融合」という特集があって、興味深く読ませてもらいました。

http://www.fujisan.co.jp/product/1281680338/b/1079933/

誤解の無いように言っておくと、理学療法士は鍼治療は出来ません。
しかし、鍼治療を行うポイントを理学療法的に刺激すると症状の改善が得られるようです。

興味があって、Pubmedで鍼治療に関して調べてみると結構RCT(ランダム化比較試験)が多いことに気付きました。しかも、Sham(偽)鍼刺激との比較をしているものが結構あります。

現状でいうと、Sham刺激との差があるという論文もあれば、ないという論文もあります。
中にはプラセボ効果だと結論付けている書籍もあるようですが、Sham刺激も安静条件と比較して鍼治療と同様の効果という論文もあるので、何らかの効果はありそうです。

鍼治療は、身体に備わる自然治癒能力を高めるということで、西洋でも最近注目され始めたそうです。

エビデンスは大事なのでが、エビデンスは無いものに関しては、「現在はない」というように考えるべきです。
研究が進んでいくに従って、エビデンスが出てくるものもあるので、「エビデンスが無いから治療に取り入れない」というのは消極的であるように思います。
その検証作業は臨床家が担っていくべきなので、エビデンスを作るのは対象者を治療する人間ということを忘れてはならない気がします。

※ここでいっているエビデンスとは、EBMの概念図の3つの輪のうちのリサーチエビデンスのことを言っています。

2014年4月17日木曜日

努力は報われるか?


ニュースで毎日のようにSTAP細胞のニュースが流れています。

小保方氏はSTAP細胞はありますと泣きながら会見してましたが、STAP細胞が実在するかどうかは私は分かりません。

ただ、現在のところ実在するということを証明できていないことは事実です。
仮に実在していたとしても、それを証明できていない論文に関しては撤回されるべきでしょう。

さて、この問題には今まで自分が頑張ってきたのだから認めてほしいし、努力を全く無かった事にはされたくない。だから論文の撤回もしたくないという心理がはたらいているように思います。

努力は必ず報われるとよくいわれます。

会社の営業職を考えてみても、得意先に毎日のように通い、頭を下げ続けて頑張っていれば契約が取れることがあると思います。
臨床に勤務している理学療法士でも対象者のために頑張って勉強して、丁寧に治療していけば対象者の回復の程度も違うと思います。

しかし、研究職になると少し違ってくるように感じます。

私は大学に勤務しているので、研究職でもありますが、私達は研究だけでなく教育、社会貢献の実績も見られるので研究所等に勤務している純粋な研究職とは少し違います。

研究職は何で実績を見られるかというと、文句なく論文の数です。

"Publish or Perish"(発表か死か) とよくいわれますが、いかに研究を頑張っても論文にしなければ業績はゼロなのです。
そこにどれだけ頑張ったかという評価は全く入りません。

論文を書くのは結構な労力がいります。
それが投稿先の雑誌にReject(却下)されてしまえば、いくら頑張って論文を書いたところで業績はゼロなのです。

私も論文を書いていて、夜遅くまで書いていると「こんなに頑張っているのだから認めてほしい。」と思うことはよくあります。

また、新規の事実があることは主観から明らかなのに、うまくデータに現れてくれない時もよくあります。

そんな時は小保方さんのように「データには表せていませんが、〜があることは確かです。」と叫びたくなることはよくあります。

でも、客観的に表せないことは無いも同然なのです。

STAP細胞の件に関しては、自分の努力を認めてほしいがための焦りから生まれてものであるように思います。