2012年3月28日水曜日

半側空間無視の世界

半側空間無視の対象者というのはどのような世界を感じているのでしょうか?

 重症の対象者の場合は同名半盲という視野の障害と合併してる場合も多いのですが、そうでない場合もあります。つまり、視野は保たれているけれど見えていない状態というわけです。半側空間無視は様々なメカニズムが考えられていますが、現在は空間性(方向性)注意の障害によるものと考えられています。空間性注意というのは簡単に言うと、意識を適切なところに集中させることが出来て、対象としたものに目や身体で行動を起こせるということです。目の前にハエが飛んでいれば、それを見て、場合によっては手で払いのけることが出来るということです。半側空間無視の場合は特に無視側(多くは左側)にそれが行いづらい状態というわけです。脳の右と左の半球(俗にいう右脳、左脳)でそれぞれ右側の注意とか左右両側の注意とか役割分担があるので、脳血管障害になると片側だけ空間性注意の障害が起こるというわけです。

 さて、ここから本題です。視野は保たれているのに、見えていないとはどういうことなのか? それを説明するのに健康な人の視野をおさらいします。
 両目で見ている視野は100°で、片側の目だけなら真横にあるものも見えていることになります。それでは、健康な人は食事をするときに必ず真横に何があるかはっきり分かって食べているでしょうか? また、真横から飛んできたボールは、視野には入っているはずですからよけられるでしょうか?
おそらく、無理ですね。真横どころか斜め前にある柱にぶつかることは健康な人でもあることです。
視野がこれほど広いにも関わらず、ぶつかることがあるのは、視野には入っている(見えている)けども脳で情報がカットされているということです。広く意識するよりも目の前にあるものに焦点を絞り、意識を集中させたほうが効率がいいからなのです。

 簡単に言いきれるものではないですが、半側空間無視では無視側の空間が見えているのに情報が伝達していない(カットされている)状態ということもできます。健康な人でも意識したり、目立つものがあれば視野の端のほうにも注意が行くように、半側空間無視のある方でも促すと気付く人もいます。それが見えているのに見えない状態ということです。

 健康な人が一日中常に真横に何があるか意識していなさいと言われたらどうでしょうか? 視野としては真横まであるのだから見えているでしょうと言われたら? おそらく、すごく疲れて集中力が続かないと思います。半側空間無視のある方に無視側に注意を向け続けさせることは私はそれと同じだと思っています。

 もやもや病で高次脳機能障害を抱える医師の山田規畝子さんは講演でこのように言われていました。「左側を忘れることがあるから注意しなさいと、食事の時などいつも言われていました。しかし、私にとって左側は存在しないのと同じだし、注意するのはすごく労力がいるので、そう言われるのが嫌だった。」半側空間無視のある方に無視側の注意を促すことは、リハビリテーションでよく行われていますが、それはどれほどの労力をその方が要しているのか、言われることに嫌悪感を感じていないかという視点はセラピストにとって無くてはならないと思っています。

 今日は私なりの半側空間無視の方に対する接し方を書いてみました。






2 件のコメント:

  1. 同名半盲の全体のみえかについt

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  2. 半盲の全体のみえかについt

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